茶臼山石棺群
概要:様々な出土遺物があり、保存・管理も良好である。弥生時代末期から古墳時代前期にかけての石室形態の変化を確認できる。

種別:石棺群
時代:弥生時代末期〜古墳時代初期
所在地:山口市白石一丁目(移築前)
立地:鴻ノ峰南山麓から舌状に伸びた支丘の末端部(移築前)
標高:約32.25m
形式:いずれも組立式石棺
現状:ゴルフ場建設のため、現在は山口県博物館内の敷地に9つの石棺が移築されている。
備考:在地勢力者の同一血族の墓地であると思われる。
これらの石棺群は、その位置関係や形態などからA・B・Cの3つのグループに分けることができる。
<A群>
備考:墓石の南西部に位置し、石材が小さく不揃いの板石が用いられている。朱は認められていない。
・2号石棺
主軸:N72度W
内法:187×42〜54×36〜46
出土遺物:ガラス小玉(紺)1、頭骨3(内、1つは下顎骨が見つかっていない),大腿骨,脛骨
備考:側石は4枚、5枚。妻石はそれぞれ1枚。蓋石は4枚(内、1枚は粉砕され、もう1枚は後世にはぐられ、そのまま放置されていた)
出土遺物の人骨は、3体の内2体は他の墓から改葬されたものと思われる。
・3号石棺
主軸:N55度W
内法:107×27〜34
出土遺物:人骨砕片、乳臼歯、管玉(1.2〜1.5cm)
備考:側石,妻石はそれぞれ2枚、1枚。蓋石は4枚。隙間や床面には土器片が敷き詰められている。
・7号石棺
主軸:N75度W
内法:210×47〜53×25〜30(他と比べるとやや浅い)
備考:側石は6枚、5枚。棺内は土砂で埋まっている。
<B群>
備考:A群とほぼ同じであるが、板石はやや大きく、石棺は細長い。構造は簡素。台地端に位置するため、後世の損傷が大きい。棺壁にわずかの朱が付着している。
・6号石棺
主軸:N57度W
内法:200×50
出土遺物:頭骨の小片,大腿骨1本
備考:台地末端部に位置し、側石,妻石は傾斜になっている。側石は各5枚、妻石は4枚と見られるが何枚か紛失しており、中は土砂で埋まっている。
・8号石棺
主軸:N55度W
深さ:35〜41cm
備考:7号石棺と近接している。丘端部の蓋石、妻石は欠失。土砂が流れ込んでいる。
・9号石棺
主軸:N22度E
深さ:55〜60cm
備考:8号石棺の南西方向に位置し、その蓋石の間隔は35cm程度。西南方向に傾斜しており、石組みが乱れている。側石は5枚、6枚で、蓋石は6枚。
<C群>
備考:縦長の整然とした板石を使用いている。大型で胴ふくらみの形状、床面も深い。側石や妻石は粘土で覆われ目貼りされ、土砂の流出を防いでいる。そのため、側面,床面には濃い朱が残っている。
・1号石棺
主軸:N60度W
備考:最初に発見された石棺で、ブルドーザーにより、蓋石2枚と妻石、側石3枚が破壊あるいは移動されている。北東の側石6枚と、西南の石材は緑色片岩。床に青黄色の粘土。棺材は他の地面に埋め込まれる構築方法とは異なり、側石,妻石の上半分は約30cm露出している。さらにその上に版築状の土層が存在することから、60cm以上の墳丘を持っていたと考えられる。
・4号石棺
主軸:N72度W
内法:230×74〜89の胴ふくらみ型
出土遺物:後頭部、上顎骨、下顎骨他、小さな骨片
備考:側石は7枚、5枚の縦長の整った石。蓋石は3枚(内2枚は大きな板石)
・5号石棺
主軸:N60度W
内法:208×55〜70×49〜60(他の石棺より深い)
出土遺物:下顎骨、歯、脊椎骨、肋骨、大腿骨が1箇所に集まっている。(座位の状態で崩落している)
備考:側石は6枚、5枚。蓋石は6枚。繋ぎ目は幅20cmの粘土で目貼りされている。